株式会社タダノユーティリティ

ADVANCED TECHNOLOGY 先進技術


SAFETY TECHNOLOGY 安全技術

世界標準の安全性
第7世代高所作業車
NULシリーズの開発
  1. はじめに

    高所作業車は、高所作業中の転落事故の防止、足場仮設撤去の時間短縮、全体工期の短縮、作業位置までの昇降歩行による疲労の軽減など、高所作業の安全化、効率化、建築コスト低減を目的として導入されてきました。
    又、自走式高所作業車は利便性が認知されたことから建築、土木工事以外の様々な現場環境での使用も増えてきました。その一方で、高所作業車を使用しての転倒事故、接触事故が完全にないわけではありません。
    世界の技術のトレンドを見ると、例えば世界でもっとも厳しい規格が導入されていると言われる欧州のCE規格では、機械の安全性の性能は、はるかに高いものが求められています。
    今回、タダノユーティリティは「転倒しない、接触しない高所作業車」をコンセプトとして安定性、安全性においてCE規格をクリアする第7世代の高所作業車NULシリーズを開発しました。その仕様の一部について紹介します。

  2. 転倒させないために
    安定性向上

    CE規格の安定性基準の大枠を第1図から第4図に示しています。
    第1図から第3図は静的安定性評価項目で車両を静止させた状態で評価を行い、第4図は動的安定性評価項目で走行を行い評価しています。
    第1図は風速12.5m/sの強風下でも転倒しないことを確認するため昇降装置の垂直投影面に風の荷重を加えて評価することです。
    第2図は作業員が押したり引いたりの動作荷重を1人あたり200Nの荷重をバスケット上で横向きに追加して評価すること(2人の場合は400N)です。
    第3図は昇降装置の動作慣性力(0.1G)を加味することです。
    第4図は10cmの段差を乗り越える試験を行い、転倒しないことを確認することです。以上4つの安定性基準がCE規格では求められています。

    第1図 風が吹いても転倒しない
    第2図 作業員の押し引き荷重
    第3図 昇降装置の作動慣性
    第4図 10cmの段差乗り越え

    尚、走行しながらの昇降・旋回操作は車両重心の変化量が大きく評価が困難になることもありCE規格では走行と昇降・旋回の同時操作は禁じられているため走行時は昇降・旋回が行えない仕様となっています。
    この要求を満たすことに加え、タダノユーティリティは更に使用可能な地面の傾斜角度を従来の3度から5度に引き上げました。
    引き上げた理由は、水抜き勾配、バリアフリー法による階段ではなくスロープによる造成など純粋な水平面よりも傾斜面での高所作業車の使用が増えることが予測されているため、このような現場であっても車両の不安定感を減少させ安心して作業ができ、車両を転倒させないようにするためです。
    この性能を満足させるためにNUL09-7(第1表、第7図)という機種では、作業範囲を従来機より狭めないよう、車体のサイズアップと機械質量の増加を行いました。尚、車体幅は工事用エレベータへ乗り入れる事を想定し2,000mm以下としました。
    完成した車両の転倒限界角度は、第5図のように最大作業半径の姿勢においては大きく向上しました。定格荷重積載のみの条件下での試験ではありますが従来機の限界角度に対し約2.7倍の傾斜面でも転倒しない性能を有します。
    又、制御システムについては、角度センサーの二重化、高精度傾斜センサーの採用、危険側動作の回避制御システムを加えることで安全制御システムの信頼性を大幅に向上させました。

    第5図 性能比較
    従来機NUL090-6
    新型NUL09-7
  3. 過荷重検知装置

    高所作業車の転倒事故では、作業床(バスケット)に定格荷重を超えた積載をすることにより転倒事故になるケースが多く見受けられます。これは、工事現場での作業時間を短縮したいという意図から、建築用材料を沢山積み過ぎることによる場合が多いです。
    このような事故を無くすため、作業員のカン任せの積載重量判定ではなく、車両による積載荷重の自動監視が行える装置を追加しました。
    作業床に定格荷重を超える積載をした場合は過積載であることを告げる警告灯を点灯させ、警報を鳴らします。車両は、作業者が操作をしても動きません。
    積載物を定格荷重以下に減らすと警告、警報は停止し動作も可能となります。(NUL12-7以上の機種に標準搭載)

  4. テレマティクス

    車両の状態を遠隔地で把握できるテレマティクスの装置を組み込むことで、車両の位置情報やエンジン稼働状況の監視及び車両の盗難などの異常事態が発生した場合にはリモートでエンジン停止が可能になります。(オプション仕様)

  5. 上部操作部の
    表示パネルの機能強化
    (図6)

    (一部機種は除く)
    作業員が車両の状況を唯一把握できる作業床(バスケット)の操作パネルに以下の機能を追加しました。

    • 路面傾斜の度合いを把握できるカラーバーグラフ

      車両がどの程度の斜面に位置しているのか視覚的に把握できるようにしました。

    • エラーコードの表示

      故障した箇所や内容が3桁のエラーコードで表示されるようになりました。対処方法が明確になるため、サービス対応が、より迅速に行われると共に取り残された作業員の不安を取り除くことに繋がります。

    • 操作レバーアシスト表示

      車両が許容路面傾斜角を超えると傾斜センサーが感知し、転倒を防止するため、走行と作業床の昇降の操作に制限が掛かかります。その際に、安全な姿勢に戻すための動作が可能な方向を示す表示を追加しました。

  6. デッドマン装置

    高所作業車には非常停止装置が装備されており、車両が意図しない動きをした場合には作業員の意思で強制的に機械を停止する事ができます。しかし、不測の事象により作業員がパニック状態に陥った場合には停止装置を操作できないケースもあります。このような場合にも対応できるよう、制御システムにより車両状態の監視、誤作動を検出し動作を停止する機能を追加しました。

  7. おわりに

    今回開発した車両は、ロングセラーであった従来機の良さを踏襲しつつ、世界一の安全性を兼ね備えた車両となりました。
    この車両によって作業員には安心感を与えて疲労軽減をもたらし、作業効率が上がることを期待しています。
    高所作業車を使用することによる危険を全て排除することはできませんが、重大な事故を起こさないためにヒューマンエラー及び故障に対するリスクを下げる手段を最大限取り込み、労働災害ゼロ、危険ゼロを目指し、引き続き安心・安全な車両の開発・改良を行っていきます。

    第1表 NUL09-7 主要諸元表
    作業床最大地上高 mm 9,010
    最大作業半径 mm 6,480
    積載荷重 kg 200
    輸送寸法 全長 mm 5,250
    全幅 mm 1,980
    高さ(PADなし) mm 2,250
    車輌質量(ゴムクローラー) kg 4,750
    許容路面傾斜 ° 5
    寸法 クローラ中心 mm 1,870
    タンブラ中心 mm 1,680
    平均接地圧 kPa 41.2
    第7図 NUL09-7 外観

ELECTRIC
TECHNOLOGY
電動技術

(バッテリー7m屈伸ブーム型クローラ)

国内メーカー初‼
クローラの屈伸ブーム型
バッテリー高所作業車

製品特長
  • 「日中8時間稼働⇒夜間充電」のサイクルで十分使用可能なバッテリーを搭載。
    • 弊社標準動作パターンにて
  • エンジン搭載機と同等の操作性能、走行性能。
  • 静音、低振動、低排熱⇒都市部などの密集地での建築工事に最適。
  • 地下やトンネル工事、屋内工事にも対応。
標準動作パターンにおいて、
約50回動作可能。
1日の動作回数を15回とした場合

3日間以上の稼動が可能

バッテリー長寿命設計

ACモーター及び大容量バッテリーを
搭載しています。

非常用降下装置を装備

電気トラブルの際に手動でブームを
下げることができます。

鉛バッテリーが標準タイプ

メンテナンスフリーバッテリーが、
標準となっています。


NEW
STRUCTURAL
TECHNOLOGY
新構造技術

車両重心移動
コントロール機構

フロントアタッチメントのリフトブームと伸縮ブームの重心移動を組み合わせ、車両姿勢の変化に従って重心がいつも安定側になるように特殊なリンク構造を設けた。従来形のウェイトを無駄のない次元まで最適化することで車両全体の重量は同クラスより1.8tも軽く且つ全方位安定性を同レベルに保つことを実現。